圭さん日記

放送作家・脚本家、高坂圭のブログ。

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あまりに対照的な二冊

1冊目は、朝倉かすみ「平場の月」。
病院の売店でレジ係をやっている女と印刷工の男。
50歳、同級生の友情のような恋愛模様を描いている。
生活感あふれる、地べたのやりとりが心地よいのだが、
文章表現が独特で、?と思うところも多々あり。

 

2冊目は、平野啓一郎「マチネの終わりに」。
こちらは先ほどとはうって変わり、
クラシックの売れっ子ギターリストとと、国際的
ジャーナリストという、貴族な40歳の恋愛模様。

 

気障で文学的な文章が時折鼻につくが、
ぐっとくるフレーズも多い。
たとえば、

 

「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。
だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。
変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。
過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか」

 

「父からはヴェニスに死す症候群だと言われました。
父の造語で、その定義は、中高年になって突然、現実社会への
適応に嫌気が差して、本来の自分へと立ち返るべく、破滅的な
行動に出ること、だそうです」

 

「彼は、神様が戯れに折って投げた紙ひこうきみたいな
才能ね。空の高いところに、ある時、突然現れて、
そのまますーっと、まっすぐに飛び続けて、いつまで経っても
落ちてこない。……その軌跡自体が美しい」

「孤独というのは、つまりは、この世界への影響力の欠如の意識だった。

自分の存在が、他者に対して、まったく影響を
持ち得ないということ、持ち得なかったと知ること」

 

「こういう境遇でも、人は、音楽を楽しむことが出来るのだった。

それは、人間に備わった、何と美しい能力だろうか。こんなに近くで、

こんなに優しく歌うことが出来る。楽器自体が、自分の体温であたたまってゆく。

しかしそこには、聴いている人間の温もりまで混ざりこんでいるような気がした」

 

などなど、先の朝倉さんとはまた違った意味で
よくわからない文章も多いのだが、一方で奥底に
届く詩心もある。
芸術をここまで主題にし、投げかける小説も最近珍しい。

 

勧めるとしたら、「マチネ」かな。

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